読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

中川八洋掲示板

世界の現状は、日本の国家安全保障の危機を加速しています。この急迫の時局において、刻々と変遷激しい国内外の事態を冷静に俯瞰できる力を与えてくれる、大容量の真正の知識こそ、いまの日本人に必要なものです。当ブログは、国際政治学者・中川八洋筑波大学名誉教授の個人ブログです。

「トランプ米国大統領」は日本の国益に反しない! ──親中派クリントンより百倍好ましい事実を隠す日本の新聞

トランプ大統領は日本の好機

筑波大学名誉教授 中 川 八 洋  

 ようやく、来年からの米国大統領が二人に絞られてきた。共和党はトランプ氏、民主党クリントン女史である。いずれの政策が、日本の国益に利があるか害が少ないかについて、やっと相対的に論じられる時期が来た。

 ということは、これまで新聞テレビが垂れ流してきたトランプ評やクリントン評は有害無益な雑音雑文にすぎず、私の読者ならばすべてをいったん忘れて頂きたい。米国大統領の国内政策のうち日本の経済に大きく影響するものには関心を持つべきだが、ここでは、それはいったん割愛し、外交政策・軍事安全保障政策に焦点を当てる。

トランプ氏の“中共嫌い”を評価・報道しない日本マスコミの情報操作

 トランプ氏と言えば、「メキシコとの間の国境に万里の長城のようなフェンスを張り、メキシコからの不法入国者を完全排除しよう」など、一見過激な発言が目立つ。が、この問題は日本国にはまったく無関係で、米国の純粋な内政事項。日本が、このようなものでトランプを評価するのは、お門違いも甚だしいし、不真面目すぎる。  

 しかし、トランプ氏の中東政策や対中国中共政策や対ロ政策は、もろに日本に跳ね返ってくる。これらは、対日政策の次に重要視し着目していなくてはならない。だが、日本の新聞テレビの報道で、私の知る限り、表1のような比較分析をしたものがほとんど見当たらない。日本のマスメディアはサボっているのではなく、どうも中共やロシアの立場からのトランプ評をしているように見える。

表1;次期米国大統領の対日/対中/対ロ政策の比較

f:id:nakagawayatsuhiro:20160522120618p:plain

 まず、トランプ氏の発言を少しばかし復習することから話を進めよう。中共について、They(China)kill us.I beat China all the time.支那は、アメリカを殺そうとする。私は、何時でも、支那を撃退すると語ったことがある(2015年7月)南シナ海における中共の侵略的軍事基地の建設に対しても米海軍のプレゼンスを強化するとも宣言しており、鵺的で臆病なオバマより、はるかに大統領としては常識的な外交見識を有している。

 対シリア/対イラン政策を逆さにして中東を戦火とテロの巷に陥れた“トンデモ外交音痴”オバマ大統領を非難せず、トランプを非難する日本のマスコミは、外交や国際政治を論じる資格のないトンデモ新聞である。トランプをオバマと比較もしないで、ただ面白半分にしつっこくトランプ非難をしている日本の新聞は、日本国に牙を剥く中共に通謀する“赤い支那の犬”だということ。

中共べったりのクリントン女史の強度の「反日」性を報道しない日本のマスコミ

 さて、中共に対するクリントン女史の姿勢は、トランプと異なって、中共との平和共存策を模索している。クリントン女史の“侵略国家”中共と事を構えずの方針は、日本の国益に利するのか、それとも害するのかは、一目瞭然ではないか。

 特に、1998年6月~7月、夫のビル・クリントン大統領とともに、九日間も中共を公式訪問したことを忘れてはならない。歴史を忘却する者は知性なき無教養人であり、政治や外交を語る資格はない。

 ビル・クリントンは、この訪中で、米国大統領として“三つのノー no”を表明した。「二つの中国(「一中一台」)にノー」「台湾の独立にノ―」「台湾の主権国家として国際機関への加盟にノ―」の三つ。

 しかも、この1998年から来年は約二十年が経過する。この“3つのノー”は、米国の対アジア政策に重くのしかかってくるだろう。1998年時点でのそれは、米国が上から目線で中共を見下しての米中平和共存の枠内の“3つのノー”であった。だが、2017年以降の米国は、軍事力が数倍に強化された中共に対して自らの“三つのノー”不履行にびくびくオドオド怯えざるを得ない情況にある。米国大統領が、余程の「反中」でない限り、日本の国益は守り切れない。

 ヒラリー・クリントンのような、中共から多額の献金をもらい、中共から依頼されるままにTPPを反対する“中共べったり”では、日本の国益が守られるアジア政策が採られる可能性は極めて薄い。日本のマスコミが、ヒラリー・クリントン政治資金の“北京からの黒い金”問題を取り沙汰しないのも、習近平から工作されているからだろう。

 ヒラリーの「反日」「中共一辺倒」は、ブッシュ(息子)大統領の「親日」「日本重視」とは180度逆の性格のものだから、日本にとって最悪の対日政策になるのは衆知のはず。つまり、日本国の国益を毀損するヒラリー・クリントン「米国大統領」を想定した上での日本の危機を憂慮できない日本人とは、自国忘失病が深刻なレベルに進んでいるということだ。

トランプの日本関連発言はすべて、公正だし、合理的だし、妥当である

 一方、「反日」性が全くゼロのトランプ氏に関して、日米同盟を堅持する枠内における正当な“費用分担”の言動をしているだけなのに、これをさも「反日」であるかに摩り替えた悪質な歪曲報道が、日本では大々的に流されている。このような偏向と歪曲の日本の報道の方が「反日」的だし、「反・日米同盟」性が露である。トランプ氏は、こう言っただけである。

「日本、韓国、ドイツなどすべての同盟国を守ることはできない。もっとお金を払わせたいのだ」(2016年2月25日)

「日本は世界の同盟国の中では最も多額の米軍駐留費の一部負担をしているが、米国が負っているコストに比すればはるかに僅少である」(2016年3月26日)

 すなわち、トランプ氏は、朝日新聞のような“日米同盟の破棄”などの日本を毀損する「反日」政策などいっさい発想していないし、そのようなものとは無縁である。日米同盟を維持していくためのコスト分担の適正な配分burden sharingを求めているに過ぎない。すなわち、トランプ氏の言い分は、“公正 equityの範囲”にある。日本として耳を傾けるべき内容ばかりである。  

 ただ、難があると言えば、日米同盟のコスト分担に関するトランプ氏の言が、余りに古臭いこと。駐留経費の日米間分担論は1980年代までは妥当で合理的であった。が、2000年以降の日米同盟のburden sharingは、駐留経費の分担だけでなく、中共の海軍力/核戦力の増強分に対応すべく新規の米国原子力空母などアジア配備の新規兵器の建造費の分担問題に昇格すべきだろう。  

 例えば、南シナ海における中共の侵略的な軍事態勢の強化に対応して、アジアにプレゼンスすべき米国海軍力は、現在の横須賀母港の原子力空母一隻では不足である。第二隻目を名古屋港などに新しい軍用桟橋を創り前方展開させることが、急を要している。この新規の軍港と二隻目の米国原子力空母の建造費を日本が負担する問題は、日米同盟の議題としては理に適う。  

 しかも、この空母建造に関して、軍事機密に属さない部分については、日本の企業が受注できるようにするから、日本の対米負担は建造費全ての全額とはならない。七割前後か。

 トランプ氏の発言をおどろおどろしく報道する好材料に悪用されているのは、あと二つある。①日本の核武装容認発言、及び②日米安保条約の片務性の是正発言。だが、いずれももっともな意見で、トランプ氏に間違いは存在しない。アジアと日本の安全保障問題にかかわる理解の度合いは、トランプ氏は圧倒的に優秀で、オバマクリントン女史など足下に及ばない。

 「米国が敵国から攻撃されても日本は米国支援の義務はないが、日本が敵国から攻撃されたら米国は参戦の義務がある」日米安保条約の片務性問題は、1960年の安保改定時に憲法第9条解釈変更を内閣法制局が抵抗したため是正できなかったもので、岸信介が無念の涙を呑んで遺した欠陥条文である。つまり、トランプ氏は、「片務性を直せ」の岸信介の遺言を発言しているだけではないか。岸信介に成り代わっているトランプ氏なら、日本が主権国家に復権することを願う“日本国にとって最高の紳士”だということにならないか。

 日本の核武装については、トランプ氏は次の文脈で語った。その意見や視点に軍事学的に何らの間違いはない。日本人よりも日本国の安全保障を真剣かつ賢慮に思考している。実に的を適格に把握している。また、このトランプ氏の見解に、“同盟国・友邦国”日本への友情と信義が滲んでいる。

「米国の軍事的弱体化が続く限り、私が議論するか否かとは別に、日韓は核兵器保有を望むようになろう」「北朝鮮は攻撃的な国で、特に日本に対して攻撃的である」(『日経新聞』2016年3月28日付け他)。  

 日本は、北朝鮮対策として、海自の潜水艦から発射する核弾頭搭載SLCMトマホーク巡航ミサイルを米国から購入配備する、ささやかな核武装を急ぐべきである。すなわち、これを指摘できたトランプ氏とは、安全保障問題で“正しい”を越えた、偉大な賢察力の持ち主である。日本の外務省官僚や新聞記者の中で、トランプ氏の足下に及ぶ見識を持つ者は一人もいない。

親英米の幣原喜重郎政権とアメリカ・ファースト派共和党政権が理想の日米関係

 トランプ氏は、共和党の予備選中、しばしば「アメリカ・ファースト America First」を口にした。この懐かしい米国外交政策のスローガンは、大東亜戦争前期の日本が等閑視した米国の反ルーズベルト外交路線のこと。当時の日本の新聞は、親日ではないが結果的には親日となる「アメリカ・ファースト」運動をほとんど報道しなかったし、日本外交を外務省から簒奪していた陸海軍は、この「アメリカ・ファースト」の存在をいっさい無視した。

 日本が「アメリカ・ファースト」派と連携すれば、ルーズベルト大統領の対外介入主義を阻止できた可能性は否定できない。ともあれ、真剣に大東亜戦争を反省する“歴史に本物の教養ある保守系日本人”には、実に感慨深いスローガン。私は、この「アメリカ・ファースト」と聞くと、三人の名前がすぐ頭に浮かぶ。幣原喜重郎、リンドバーク、ハミルトン・フィッシュである。  

 大西洋を1927年5月に単独無着陸の横断に成功した飛行家リンドバークも、米国共和党下院議員のフィッシュも、両者とも、第二次世界大戦への参戦に傾くフランクリン・ルーズベルト大統領と激突した米国の保守主義者で対外不干渉主義者(日本では「孤立主義」との用語が多い)である。

 リンドバークは「アメリカ・ファースト」の活動家で、1941年1月、対ヒットラーとの戦争に傾斜するルーズベルト大統領を弾劾的に非難する有名な演説を連邦議会で行っている。ハミルトン・フィッシュは、その著『日米・開戦の悲劇』が翻訳されているので知っている日本人も少なくないが、日米戦争反対の急先鋒であった。「ハミルトン」という名前を代々子供につけるのは、その先祖が“米国建国の父”アレクザンダー・ハミルトンを尊崇するからで、この事はフィッシュ家が伝統的な米国保守主義の家系にあることを示している。

 「アメリカ・ファースト」とは、米国の国内問題を第一に優先して対外戦争などすべきではないとする、第一次世界大戦後のアメリカにおける保守主義者側の外交路線をいう。だが、社会主義シンパでスターリンに傾斜するルーズベルトは、ヒトラーソ連に侵攻した1941年6月にヨーロッパ戦線への参戦を決意する。日本の近衛文麿山本五十六(備考1)が画策した対米戦争の決行は、スターリンを救うためのルーズベルト大統領の対独戦争の宣戦布告を正当化する口実となった。

 また、“稀代の共産主義者”で“スターリン直属のロシア人”だった近衛文麿が独断専行した対・蒋介石戦争も対英米戦争(備考2)も、スターリンの命令で開戦した。日本は、1937年、ソ連の属国になっていた。

 このように、第二次世界大戦は、ヒトラーの対ポーランド侵攻と対英仏戦争の部分を除けば、すべてがスターリンの脚本と命令によって遂行されたもの。大東亜戦争を肯定する日本人は、シベリアに移住すべき売国奴である。近衛文麿共産主義者参謀本部を占拠された日本の帝国陸軍を自由に操るスターリンは、ルーズベルト政権の対外政策をも操って大東亜戦争/太平洋戦争を遂行させたのである。

 要は、大東亜戦争/太平洋戦争の愚行の歴史は、日本が英米協調主義者の幣原喜重郎の外交路線に固執し、一方の米国が「アメリカ・ファースト」派路線に従っていれば起きなかった。この歴史事実に基づけば、日本の英米協調主義と米国の「アメリカ・ファースト」派こそ、アジアの安定と太平洋の平和の要だったことになる。スローガン「アメリカ・ファースト」に“平和”が感得されるのは、このように、語源からも当然だろう。

米国の「アメリカ・ファースト精神+レーガン/ケネディ型外交路線」が、日本のベスト

 アジア太平洋の平和のためには、日本側が幣原喜重郎吉田茂の対米協調主義/日米同盟主義を堅持することに尽きる。この日本の対米政策は、日本の地理的宿命において不変である。  

 だが、二十一世紀の米国が、戦間期の「アメリカ・ファースト」ではアジア太平洋の平和と安定は望めない。米国の建国時の“保守主義の精神”が宿る「アメリカ・ファースト」には敬意を表するが、米国の対外政策が不干渉主義である事はもはや時代錯誤で、現在では無効で有害である。  

 ルーズベルト大統領のような“間違った干渉主義wrong interventionism”であってはならないが、レーガン大統領のような“正しい干渉主義right interventionism”が米国の対外政策の根幹でなくてはならない。米国の衰退は、日本の衰退に比すれば、まだましbetter である。それでも、国力が1980年代のそれに比すれば弱体化している。

 この日米の状況下で、日本が進む道は、もはや明らか。日本が決断すべき第一は、日本が1972年に始めた「福祉国家」路線を全面的に放棄して“国防第一の日本”に大転換すべきこと。祖国が存続し平和があって初めて繁栄を謳歌できるのだから、第二は、米国の軍事力倍増に財政的に全面協力すべきこと。第三は、日本自身の国防力を現在の三倍増 ──軽空母四隻と海兵隊創設、ならびに陸自35万人と戦車3000両態勢 ──を急がなければならないこと。

 この日本の進むべき道において、トランプ氏が米国大統領となるのが、クリントン女史に比すれば百倍以上は望ましいし好ましい。トランプ氏なら、上記の日本の賢慮な路線変更に全幅の支持をするだろうことは疑いがなく、日本と最高のコンビを組んでアジア太平洋の安定と平和の基盤を構築できる。日本が米国大統領を選ぶとすれば、日本と話ができる男でなければならない。(5月12日記)                                     

備考1;山本五十六には、スターリンとの関係もないし、共産主義思想も片鱗すらない。山本が狂信的な対米戦争主義者であったのは、その精神病からの廃墟主義イデオロギーによるもので、東京を火の海にして焼却したかったのである。戊辰戦争における長岡城の炎上への報復である。

 山本五十六ロシア工作員説が、拙著『山本五十六の大罪』を読んだ(雑誌『正論』の執筆者等に多い)無学無教養な民族系の雑文屋から流されている。民族系論客とは専門書を正しく読めないゴロツキならず者たちであることが、この誤読の事実からも証明されている。

備考2;対英米戦争はあくまでも首相の近衛文麿が、帝国陸軍・海軍の狂信的な共産主義軍人と組んでクーデター的に1941年7月&9月の御前会議で強引に決定したもの。東条英機は、1941年10月に突然辞任した近衛の後釜として首相になり、近衛の御前会議決定を覆そうとしたが、鈴木貞一等の反対を封じ込められず逆に近衛文麿の対英米戦争の決定を裏書きすることになった(11月5日)。対英米戦争の日本の首謀者は、東條英機ではなく近衛文麿なのは、かくも明白。

 だが、近衛が共産主義者であることで戦後日本は近衛の犯罪を隠すことにした。戦後日本の近衛犯罪の隠蔽工作に、学界と出版界の主流である共産党系学者だけでなく、民族系評論家も加担し協賛し続けた。民族系評論家は、本質的に“共産党の別動隊”である。

 

関連エントリ

トランプ大統領は日本の好機

中川八洋掲示板は、amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。