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中川八洋掲示板

世界の現状は、日本の国家安全保障の危機を加速しています。この急迫の時局において、刻々と変遷激しい国内外の事態を冷静に俯瞰できる力を与えてくれる、大容量の真正の知識こそ、いまの日本人に必要なものです。当ブログは、国際政治学者・中川八洋筑波大学名誉教授の個人ブログです。

プーチンの対オバマ核恫喝は、北海道侵攻のシグナル──非難声明を出さなかった安倍晋三は、“プーチンの犬”以下の、 日本に亡国を齎す疫病神 

筑波大学名誉教授  中 川 八 洋

 

 プーチン大統領が、その凶暴な侵略独裁者の本性をいよいよ過激に現わしてきた。米国のオバマ大統領に対して、「ウクライナを軍事的に防衛したいのなら、ロシアとの核戦争を覚悟してからにしろ」と核恫喝をしたのは、2015年3月15日の国営テレビ・インタヴューでの発言であった(注1)。

 クリミア半島への軍事的侵略成功一周年記念日である3月18日を前に、米国に対してこの侵略戦争勝利の凱歌を高らかに挙げるついでに、対米/対欧州に威嚇したのである。ロシア民族は、戦争を忌避したり核戦争に恐怖する国家や政治指導者を侮蔑し、戦争を躊躇わない軍事行動を恣にする。この民族文化においてロシア民族は、“右手に絶対優位の核兵器、左手に空前絶後の絶大な海軍力を振り回した”レーガン大統領のようなロシアの核戦争恐怖煽動心理戦にいっさい動じない真正な勇者が指導者の国に対しては、今度は逆に、フニャフニャと叩頭して降伏する。

 つまり、米国の歴代大統領の中で最も怯懦(臆病)で、“病的な戦争拒否症”を病む欠陥大統領の黒人オバマが、プーチン率いる新ロシア帝国の再膨張・再侵略の決意を励まし誘発したのである。オバマの罪は、米国の国家的威信を地に落とし米国外交史の汚点となっただけに留まらない。オバマ核兵器恐怖症こそ、自由世界の新しい同盟国にならんとするウクライナのような戦略的要衝の国家を、世界平和を破壊するロシアに従属させる道に転落させている。

 オバマの奇矯な核兵器観と過剰宥和の対ロ政策とが、世界平和を全面破壊してロシア主導の世界新秩序を構築せんとする“現代版スターリン”であるプーチンを結果的には鼓舞して、ロシアの対外膨脹への野心を増長させている。オバマは、その意図は異なるだろうが、結果から見ると、“侵略再開のドン”プーチンの共犯者に成り下がっている。

 スターリンは、世界一の民族文化としての外交力に加え、ペスト菌共産主義の伝染力を活用した。プーチンはこの外交力に、対米優位の核兵器主体の軍事力を加えて、再びロシアを世界帝国へと押し上げようとしている。これに、習近平中共が助っ人するから、プーチンの野望が画餅で終わる事は万が一にもありえない。

オバマの“核のない世界”演説が招いた、プーチンロシア帝国の大侵略の再開

 もともとプーチンが、ウクライナへの侵攻・侵略に代表される“ロシア領土を再膨張させる時が来た”と、その実行を決意したのは、オバマが2009年4月12日、チェコプラハで“核のない世界”を演説した時である。この演説によってオバマは、二〇〇九年度のノーベル平和賞を受賞した。

 侵略や戦争を民族文化とするロシアは、一にも二にも、米国の核戦力に恐怖して、自らの侵略や戦争を自制する侵略国家である。米国が核戦力を大幅に削減すればするほど、ロシアの領土膨脹は加速化される。米国の核戦力とロシアの領土膨張は、反比例関係にある。

 しかも、オバマプラハ演説は、政治家に多い“言葉だけ”ではなく、実際に“行動”を伴った。それが米露の戦略核弾頭の配備数を米露対等の「1550発」とするもので、これがいわゆる「新START条約」である(注2)。

 冷戦の勝者と敗者とが同数の対等とは、米国がロシア同等の「敗者」に扱われることだし、ロシアが米国同等の「勝者」に扱われることを意味する。ならば、ロシアは「敗者」の立場から解放されて、冷戦時代に戻る権利を米国に承認されたと考える。

 ロシアが、一気にウクライナへの侵略の準備を開始したのは当然である。しかも、オバマプラハでメドベージェフ大統領と調印した新START条約は、「プラハ演説」からたった一年後の2010年4月8日だった。外交交渉としては、これほどの拙速はなく、前代未聞の拙速条約である。

 オバマとは、一九三八年秋ミュンヘンで、ヒトラーに言われるままにチェコズデーテン地方をドイツに割譲した英国のチェンバレン首相の再来といえる。ミュンヘン会談が、一年後の九月一日に第二次世界大戦の勃発を導いた事は、世界の人類が共通して臍を噛んだ、歴史の教訓ではなかったのか。オバマは、いずれ、「チェンバレンの愚行を繰り返した“世界平和破壊の悪鬼”だった」と、歴史に名を刻むだろう。

1956年11月5日のロシア核恫喝に屈した英仏の教訓

 “核恫喝の心理戦 psychological warfare”において、ロシアは天才である。1956年秋の「スウェーズ動乱」と称される、スウェーズ運河に対する共産主義者が大統領になったエジプトがソ連と組んで(表向き「国有化」と称する)侵略戦争を開始した時、ソ連(ソヴィエト・ロシア)は、伝家の宝刀を抜いて英仏に対する核恫喝を発動した。

 「ロンドンとパリに核弾頭をぶち込むぞ」の核恫喝である。1956年11月5日で、その発信者の名前は形式的にブルガーニン首相だったが、むろんフルシチョフ共産党第一書記の仕業である。英仏はこれに縮み上がり、イスラエルがスウェーズ運河を奪還すべく英仏に依頼されたとおりに陸軍兵力を展開しているのに、何と同盟国イスラエルを見捨てた。ついでに、自らの資本と技術でつくりあげ正当な商契約で所有するスウェーズ運河まで捨ててしまった。

 ソ連の核恫喝に屈した英仏は、これをもって、ソ連より下位に位置する中級国家に転落した。ソ連は、米国に次ぐ世界第二の大国の地位を確立した。フルシチョフの賭けは、勝った。ついでに、その前月十月のハンガリーへのソ連の侵略は、世界からうやむやにしてもらえた。フルシチョフは、英仏の転落とハンガリー植民地の継続という二鳥を英仏への核恫喝という一石で手にしたのである。

 スターリンが育成した共産主義者ナセルが「民族主義者」という擬装仮面で新生独立国家エジプトの権力を掌握したのを、英仏はそのスウェーズ運河侵略を好機と、この奪還のついでにナセル共産政権も同時に打倒できると安易に考え、米国と協議せず、英・仏・イスラエル三ヶ国の独断で決行したのが裏目にでたのである。

 しかも、英仏にとって不運で不幸だったのは、米国の大統領は「反共シンパ」のトルーマンではすでになかった。第二次世界大戦で多くの部下を死なせたことで、戦争忌避症の心の病気に罹った(イデオロギー音痴の)アイゼンハワーだった。ケネディ大統領やレーガン大統領のような、核戦争の恫喝には屈しない、「反ソ」こそ正義と考える正常で真正の勇者とは真逆の人物だった。

 英国イーデン首相へのアイゼンハワー米国大統領の露骨な圧力は、英仏の独断行動に怒っただけではなく、ソ連との核戦争恐怖が大きく作用している。アイゼンハワーは、ソ連が米国の十分の一にも及ばない弱小核保有国ということも、ロシア民族が過剰な核戦争恐怖症民族だということも知らなかった。

 現にフルシチョフは、米国空軍がアイゼンハワーに無断で核搭載戦略爆撃機全機をソ連に向けた出動態勢の前段階である「警戒態勢」にしたのを知るや、直ちに、核恫喝などしなかったかのごときポーズをとり、米国に「核戦争なんかしませんよ」のシグナルを送った。

西側同盟の結束こそロシア核恫喝に対抗するパワーなのを知らない安倍晋三──安倍晋三は、二回の核恫喝を撥ね付けた岸信介首相の毅然を知っているのか

 スウェーズ運河奪還戦争での全面的敗北の屈辱から、非核国家であったフランスは核武装に驀進することになった。ドゴール元帥と空軍のガロア将軍とは、どんな小規模核戦力でも対ソ核抑止は機能すると考えた。陸軍のボーフル将軍は、フランスの小さな核武装が米国の大きな対ソ核戦力の発動を誘導する米仏間の“核カップリング効果”において、磐石な対ソ核抑止力が構築されると考えた。

 フランスの原爆実験成功は1960年。水爆実験成功は1968年。フランスの公式核戦略論は、1970年代後半にボーフル将軍のが採用された。

 ロシアの対英仏核恫喝によるナセルのスウェーズ運河侵略勝利はまた、西側諸国が一致団結して、ロシアの勢力圏拡大や領土拡大に対処しなければならないことを再確認させた。これは、興奮醒めて反省しきりのアイゼンハワーもそうで、米国とは英仏など同盟国の利害をロシアの核脅威から擁護するドン首領であるべきと、やっと自覚するようになった。

 スウェーズ運河喪失の教訓から得をしたのが日本である。岸信介が保護条約の形態になっていた旧・日米安保条約(一九五一年九月締結)を、より日米対等の同盟条約に改訂しようとした一九六〇年、これを好機と、「日米同盟条約そのものを破棄せよ。破棄しなければ核弾頭を日本の主要都市に所狭しと投下するぞ」と、フルシチョフは対日核恫喝を行った。アイゼンハワーの米国は、一九五六年のスウェーズの時とは打って変わって、日本に核恫喝をなすロシアに対して猛反撃をなした。

 日本の首相・岸信介も、大東亜戦争の修羅場を体験しており、フルシチョフの核恫喝に動揺する、そんなやわな政治家ではなかった。結果として、フルシチョフの方が日米同盟の強い絆に屈し、ソ連日米安保条約破棄の“内政干渉戦intervention warfare”に敗北した。

 翌1961年、フルシチョフは、国後・択捉島ソ連軍全軍に撤退命令を出し、そこを1978年まで十七年間も非武装地帯にした。この間に日本の自衛隊が進駐すれば、それでもかまわないとの、国後・択捉島無条件返還のシグナルでもあった。ロシア軍は、撤退すると決めてそう行動したら、十~二十年間ほどは決してUターンしない。ロシア民族の民族文化である。だが、十~二十年後いったんUターンすると決めたら、妥協は決してしない。二十二年後に侵略した、ウクライナクリミア半島を見れば、このロシア民族に固有の軍事行動パターンがよくわかろう。

 ちなみに、岸信介アイゼンハワーが共同で撥ね付けたロシアの対日核恫喝の二つは、次の通り。まずは、改訂日米安保条約の調印の直後の1960年1月27日。

「日本による新軍事条約の締結は決して日本の安全保障を齎すものではない。むしろ、それは日本を新たな戦争に引き入れる結果となることによって不可避的にもたらされるであろう破滅の危機を深めるものである。

 現代のロケット核兵器戦争の条件下においては、その狭小かつ人口稠密にして、しかも外国の軍事基地の散在する領土をもつ日本全土から、最初の瞬間に、広島・長崎の悲願的運命を見る虞のある事は現在、何人にも明らかである」(注3)。

 次は、改訂日米安保条約の批准の直後の1960年6月29日。

「日本国民の敵たちは、安全のためであるという筋の立たない理屈をもって日米軍事条約の締結を正当化しようとしている。しかしながら、この条約が日本の安全を保障しないばかりでなく、逆にその悲劇的結果において広島や長崎の犠牲および第二次世界大戦における日本の敗北後起こったすべてのものを上回るであろうところの破局に、日本を引き込む危険を濃厚ならしめるものである」(注3)。

ウクライナ防衛→北海道防衛」「北海道の堅固な防衛態勢→北方領土返還」

 ロシアは、米国主導の世界的な反ロシア連合の軍事的連携の強い絆には、必ず怯んで自ら領土返還や軍事的撤退をなす。完全な国際的孤立は、ロシア民族をして恐怖に陥れ、孤立から脱却するためにロシアは必ず退却を基本とする妥協を黙って決断する。

 ではなぜプーチンは、クリミア半島で見せたように2014年3月から強硬な軍事行動を平気でとるのか。旧西側が結束していないからである。具体的には、ドイツのメルケル首相と日本の安倍晋三プーチンに擦り寄るという、独日の二ヵ国が、ウクライナ防衛で米国と足並みを揃えないからである。

 まさに、スウェーズ運河奪還戦争時の英仏と米国の亀裂が、五十八年間が経ったと感じさせないほど、そっくり再現されている。1956年の時には米国が英仏の歩調に合わせるべきがそうしなかった。2014~5年では、独日が米国に全面的に歩調を合わせるべきにそうしない。

 特に、北朝鮮から拉致被害者をいまだに一人も奪還できないその愚昧さで証明されているように、外交を海外援助のバラマキでしか考えることのできない“外交スーパー無能男”安倍晋三は、北方領土返還の対ソ政策を逆さに行っている。プーチンにソフトに接し揉み手をすれば領土が返還されると妄想的に考えているからだ。何という痴呆的な錯覚であることか。安倍晋三のわが国の国益を根本から破壊する超危険な馬鹿さは、1956年に北方領土を放棄した“痴呆病人”鳩山一郎に匹敵する。

 ロシア民族は、叩頭する外国には、「もっと叩頭せよ」と、要求を一気にエスカレートさせる。妥協には妥当で応答する英国貴族の紳士文化を外交の基軸とするアングロ・サクソンとは一八〇度相違する。ロシア民族の対外政策は、十三世紀のモンゴル帝国の対外政策をそのまま継承し、今に至るも変化をいっさい見せていない。

 キプチヤク汗国に支配される前のロシア文化など完全に消滅して存在しない。一四八〇年にモスクワ大公国として復活したロシアとは、モンゴル帝国に婿入り”して「ロシア=新モンゴル帝国」を再建したのであって、モンゴル帝国から独立したのではない。“タタールの頸木から解放された”のではなく、他民族支配の“タタールの頸木を獲得した”のである。

 話を戻す。ウクライナ侵略を核恫喝までして続行する“二十一世紀の侵略独裁者”プーチンから北方領土を奪還したいなら、このプーチン核恫喝こそ日本にとって好機であった。これを捉えて、徹底的に轟々たるプーチン批判を展開すれば、プーチンは対日妥協に心が動くからである。ロシア人は拳を振り回す者には妥協する。

 しかも、北方領土を返還しないのは、それを保持していれば、北海道が手に入るからである。北海道の軍事力を現在の十倍に強化して全道を要塞化すれば、北方領土を持っていてもその価値が激減し無駄骨になるので、返還に応じてくる。

 しかも、日本がウクライナに強いエールを送りその防衛を支援する事は、ロシアが嫌う。地球規模の対ロ包囲網ができることであり、これまた対日妥協に心が動く。だが、“逆立ちする幼児”安倍晋三は、ウクライナへのプーチン核恫喝に対して、一言の非難も抗議もしなかった。よって、北方領土の奪還はますます遠のいた。

 安倍晋三が“プーチンの犬”となった事は、世界の誰の眼にも明らかで、蔑視されている。さらに今では、安倍が北海道までロシアに貢ごうとしていることが、専門家の間に限られているが、徐々に世界の常識になりつつある。

ロシアの北海道侵攻を助長すべく外務省は、“核のない世界”国連決議を提出

 ロシアや中共の侵略・膨脹を助長しているのは、何も米国の黒人大統領オバマだけではない。日本の外務省もまた、ロシア/中共の大侵略のお先棒を担いでいる張本人なのだ。

 外務省は、2014年12月2日(NY時間)国連総会に“核兵器のない世界”を目指した『核兵器の全面的廃絶に向けた共同行動』を提案した。これへの賛同が170国となったことで、外務省は得々としている(注4)。朝日新聞どころか、日本共産党まで歓喜して拍手喝采した。

 ところが、この決議案に、日本を核脅威するロシアと中共は棄権した。この事実は、外務省は、日本が“核の傘=拡大核抑止”を依存する米国の核戦力の方はゼロの無力化に導き、日本を標的とする核兵器を増大させているロシアや中共のその核増強を支援していることになる。

 これは、日本の外務省が、ロシアや中共の核恫喝の下で日本列島のすべてを露中に貢ぐことを目指していることに他ならない。現在、日本の外務官僚の過半は共産党員や北朝鮮人ばかりとなった。祖国日本の国防や安全を考える外交官など、限りなくゼロ。外務省の建物の中で一千個の石を投げても、そのような愛国的外交官に当たる事はない。

 日本の安全にとって、喫緊な問題の一つは、中共の核戦力の大増産をどう阻止するかであるが、外務省は、そのようなことにいっさい関心が無い。だから、上記のような決議案を国連総会に出したのである。いや、日本の外務省は、隣国・中共の大増強やまない核戦力を減らす効果が無いどころか、日本に対する中共の核恫喝や核使用の危険を増大させるべく、上記の決議案を提案したのである。外務省の官僚で、ロシアや中共への媚態に生きていないものなど、もう一人もいない。この事態は、ロシアについても同様。

 外務省とはいまや、日本に対するロシア/中共の対日核脅威を決定的に有効なものにしたいと、その方向で国益を枉げている“反日官庁”である。日本国民は、現在の外務省が左傾化まっしぐらである問題にまったく無関心である。

 日本国民もまた、日本国の滅亡を無意識にだが支持しており、“国を守る”という思想も精神も、今では日本国のどこを捜しても確かに存在しない。このことは、国防オタクとか言われる安倍晋三ですら五十歩百歩においてそうなのだから、後はいわずとも知れたことではないか。

 日本が欲するのは、核兵器のない世界ではない。日本に対する戦争のない世界である。

 

1、『朝日新聞』2015年3月17日付け。

2、『朝日新聞』2010年4月9日付け。新START条約の分析は、いずれ稿を改める。

3、外務省編『日ソ基本文書・資料集』、世界の動き社、161頁、172頁。ロシアの対日核恫喝は、この二つのほか、1983年1月のタス通信を通じての強烈なものがある。このロシア核恫喝の分析も重要だが、本稿では割愛する。

4、『朝日新聞』2014年12月4日付け。その他。

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