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中川八洋掲示板

世界の現状は、日本の国家安全保障の危機を加速しています。この急迫の時局において、刻々と変遷激しい国内外の事態を冷静に俯瞰できる力を与えてくれる、大容量の真正の知識こそ、いまの日本人に必要なものです。当ブログは、国際政治学者・中川八洋筑波大学名誉教授の個人ブログです。

丸山眞男はソ連工作員だったか? ──丸山眞男排撃は、日本存続の絶対条件Ⅱ

スターリン崇拝狂の丸山眞男

筑波大学名誉教授  中 川 八 洋

 私の丸山眞男研究におけるテーマの一つに、マイナーだが、「丸山眞男は、ソ連工作員か否か」があった。ソ連工作員であろうと疑ったのではなく、丸山はソ連工作員ではないとの自分の直感と諜報分析力が正しいかどうかの方にむしろ関心があった。

 結論的に言うと、丸山眞男ソ連工作員ではないと断定して間違いないと考えている。むろん、私の諜報調査は個人レベルであり、米国のFBIや英国のMI5のような組織を持つわけではないから、完全な自信はない。

ソ連工作員南原繁の後任教授で、ソ連工作員・ノーマンに涙した丸山眞男

 丸山眞男ソ連工作員ではないかと一応疑っておくべきは、丸山がソ連工作員だった南原繁(東大総長)の愛弟子で、南原の講座ポストを継いで東大教授となった、その東大における人事を考えれば、当然だろう。

 天皇制廃止にかけるコミュニスト南原繁の妄執は、コミンテルン三二年テーゼの信奉からのもの。ために一九四六年十二月、貴族院議員となったのを利用し、皇室典範改正に便乗して、天皇制廃止を一瞬で強制できる天皇の自主的退位」条項を追加挿入しようと貴族院で提案し暗躍した(最終的には否決され、南原の策謀は頓挫した)

 なお、ソ連を排除した自由社会の諸国との平和条約締結こそ国是と考えていた総理の吉田茂コミュニスト南原繁は激突し、頭にきた吉田茂南原繁を名指しで「曲学阿世の徒!」と罵倒したことは有名。南原は、東大の教官になる前にしばらく内務官僚だったが、執務中の真昼間からレーニンの著作(ドイツ語訳)を読み耽るという、強度のレーニン崇拝者であった。南原の一九四五年三月の終戦工作は(注1)、全てモスクワの指示に従ったもの。南原は、終生、露骨なソ連人であり続けた。

 南原はまた、GHQ内の準・共産主義者だったケーディス大佐を前面に押し立てて教育勅語廃止に奔走した数名の日本側「主犯」の一人でもある。なお、この教育勅語の廃止活動をもって、米国のマッカーサー元帥は、ケーディスを「赤」と認定し、一九四八年、GHQ=日本から追放した。

 一方の日本は、当事国でありながら、ポストGHQにおいて、教育勅語廃止の「主犯」である四名の日本人コミュニスト南原繁安倍能成/前田多門/森戸辰男を糾弾することもないし、この歴史事実にすら関心が無い。とりわけ民族系の論客や団体はことごとく、骨の随まで北朝鮮人やロシア工作員に支配されており、「教育勅語廃止は、GHQのみがやった/米国人のみがやった」という真赤な嘘を吹聴して、「実行犯」ケーディスを操った日本側の共産主義者たち(「主犯」)を隠蔽してあげることに専念してきたし、今もそうである。

 話を戻す。丸山眞男ソ連工作員ではないかといったんは疑うべきは、ソ連工作員ハーバート・ノーマンの死に心底から追悼する、ノーマンとの繫がりも大きい。強度の共産主義ハーバート・ノーマンが第二次大戦以前からNKGB工作員だったことは世界中の専門家が同意するイロハ的な歴史事実。

 一九五七年四月、カナダのエジプト大使だったノーマンが、彼の祖国たるソ連から、口封じと用済みのため自殺を命令された時(注2)、カイロのスウェーデン大使館の屋上から飛び降り自殺した。自国のカナダ大使館やその他のビルを避けたのは、さもソ連の関与がなかったかに擬装するためであった。ノーマンは、死の直前までソ連共産党の信者としてモスクワへの忠誠一本槍を貫いて生涯を終えた。

 丸山には、一九五七年の毎日新聞に掲載したノーマン追悼文(注3)がある。そこではノーマンが通常の自主的な自殺をした、マッカーシズムの犠牲者だったとなっている。「ノーマンの死」にかかわる、丸山の余りに陳腐な記述で苦笑した。こんなレベルの追悼文を書くようでは丸山眞男工作員など務まらないと思った。また、ノーマンを語る丸山の目に涙が薄っすらと浮ぶのを一度だけだが目撃したことがあり、このとき、人前でノーマンへの敬愛を晒すようでは工作員ではないな、と思った。

 ノーマンと昵懇だった高木八尺都留重人ソ連工作員であるのは露わに明らかだが、安藤昌益の研究などノーマンとは同学の士であったにもかかわらず、丸山眞男には高木八尺都留重人らのようなソ連工作員の活動履歴を示す「証拠」がほとんど発見できない。ノーマンとの人間関係だけで丸山をソ連工作員の容疑者とするのは早計である。

丸山眞男を世界に名の知れた学者に仕立て上げた、ソ連NKGB/KGBの関与

 丸山眞男ソ連工作員ではないかと疑う、(日本以外の英米などの)その道の専門家が状況証拠として挙げるのが、丸山眞男の作品を英訳出版する手助けやプリンストン大学等からの名誉博士号授与にソ連工作員と目される者が関係した事実。

 確かに、例えば、丸山眞男が英国オックスフォード大学に研究員として招聘され(一九六二年六月~六三年四月)、これによって『現代政治の思想と行動』(一九五七年の初版版)がOxford University Pressから英訳出版されたが、KGBがこれに無関係だったとはいえない。あるいは、一九七三年にプリンストン大学から名誉文学博士号、ハーバード大学から名誉法学博士号が授与されたときも、背後にKGBありの噂が流れた。

 丸山眞男の海外での高い評価がKGBの支援によって創られたのが事実だとしても、それをもって「丸山眞男ソ連工作員」の証拠にも情況証拠にもならない。“北朝鮮コミュニスト大江健三郎ノーベル文学賞を与えるために、その作品の仏訳出版にKGBは全力をあげたが、これをもって「大江健三郎ソ連工作員」とはいえないし全く無関係である。

 丸山眞男大江健三郎が国際的に高い評価を得ることによって、彼らの存在そのものが日本における共産革命の推進に効果絶大となるのだから、ソ連としては世界に張り巡らせた世界最大のKGB網を駆使して、その方向の手助けをするのは当り前だろう。KGBは、ソ連工作員だけに限って支援するほど、狭量な馬鹿げた組織ではない。目的至上主義で精力的な謀略を展開する総合商社的な大規模工作機関である。

 ソ連のNKGBやKGBは、工作員となったものには生命を含めてソ連に奉仕することを厳しく要求する。だから、日本人ソ連工作員を観ればわかるように、どうしても多くの工作員活動履歴が残ってしまい、専門家の諜報分析に引っ掛かってくるのである。

 かなり話が脱線してしまった。次稿以降は、丸山政治学の学術的解剖に戻る。 (つづく)

 

1、丸山眞男福田歓一編集『聞き書 南原繁回顧録』、東京大学出版会

2、ソ連から用済みとして自殺を強制されたソ連工作員には、大東亜戦争を開始した近衛文麿(一九四六年十二月)や、ハル・ノートを書いたハリー・デクスター・ホワイト(一九四八年八月)など多数で、枚挙に暇が無い。近衛は側近の一人でソ連工作員・牛場友彦に渡された青酸カリで死んだ。ホワイトは、ジキタリスを服毒し心臓麻痺で死んだ。ノーマンが選んだ飛び降り自殺など、別に驚くに当たらない。ソ連工作員の人生を選択した犯罪者が辿る必然の末路である。

 ソ連を“聖なる母国”と考えた狂妄的な共産主義ハーバート・ノーマンの神格化は、共産主義者がすでに実権を掌握して支配する日本では徹底的になされてきた。学問的になんら価値のない『ハーバート・ノーマン全集』全四巻岩波書店、一九七七~八年)が刊行されたのは、この証左のひとつ。

 なお、滑稽なのは、ソ連工作員で“悪の共産主義活動家”工藤美代子が『悲劇の外交官―ハーバート・ノーマンの生涯』を、岩波書店から、ソ連邦崩壊の一九九一年に出版したことであろう。「ソ連がなくなっても、日本人よ、共産主義革命をあきらめるな!」と、落胆する極左日本人に発破をかける“女コミュニスト工藤美代子の煽動の激しさにはほとほと感心するほかない。

3、丸山眞男ハーバート・ノーマンを悼む」『戦中と戦後の間―1936―1957』、みすず書房

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